2014年5月12日
ナディーヌ・リボーのコラージュ作品集を刊行
──もしナディーヌが半世紀以上前に活躍していたら、彼女の作品は、かの有名なフォンテーヌ街のアンドレ・ブルトンのアトリエに鎮座し、愛蔵されていただろう──
ナディーヌ・リボーについては、前回のブログで語りましたが、実は彼女は、文筆のみならず、コラージュも多数創作していました。それも、2010年からコラージュの創作を開始し、4年間で約200点を創作するという圧倒的な創造力を発揮しています。
2013年3月に東京のギャラリー「LIBRAIRIE6」で初めてコラージュを展示、同年5月にフランス、リールのギャラリー「L’espace du dedans」で初の個展を開催、今年は「LIBRAIRIE6」での集合展に再度出品、現在は5月4日から22日まで、大阪のギャラリー「chefs d’oeuvre で個展を開催中であり、今秋は再びリールの「L’espace du dedans」で個展が開催される予定など、新作に次ぐ新作を発表、凄まじい勢いです。
何かに憑かれたように、不可思議な自分の脳髄から湧き出すかのように、苦もなく自然に創作できると彼女は言います。その事情は、本書に詳しく書かれていますので、ここでは控えますが、いずれにしても、全点、芸術性が高いのには驚かされます。今回、弊社の経済的事情により全点収録は難しく、44点を厳選した次第ですが、いまだに、あれを選べば良かったと、選に入れなかった作品を惜しむ始末です。
それだけ、ナディーヌ・リボーのコラージュは素晴らしく、アンドレ・ブルトンの畢生の大著『魔術的芸術』を読んだ方なら、お分かりかと思いますが、まさに上記の言葉どおり、往時のシュルレアリストの作品に比しても、全く遜色ない稀代の個性が発揮されています。
ナディーヌにとって作家が本業でコラージュが副業ではなく、ポエジーの発露として、創造の両輪となっており、かつてジャック・プレヴェールがそうであったように、文筆との相乗効果を生み出しています。私見によれば、プレヴェールは絵の方が素敵ですが…。
コラージュ
彼女のコラージュは、日本古代の縄文土器などの未開人の優れた感性を有し、なおかつ、ハンナ・ヘッヒやトワイヤン、インドリヒ・シュティルスキー、インドリヒ・ハイズレル、マックス・エルンスト、岡上淑子など、ベルリン・ダダやチューリヒ・ダダ、シュルレアリスムの影響が見られますが、何よりも心に訴えるのは、彼女の純粋で研ぎ澄まされた感性が、この21世紀の高度技術文明下において、その功利追求の野蛮さ、それに組み込まれた現代人の魂の卑しさに、深い怒りと恐怖を抱いていることです。
文明の呪いともいうべきものへの<るさんちまん>、その内なる感情が、欲望や恐怖と交錯し、夢やエロティスムに顕現していく驚異の魔術的芸術のさまを、ぜひ御覧いただきたいと思います。
本書は、ナディーヌがコラージュに使う和紙の風合いや、色についても細心の注意を払って印刷されています。そしてまた、全文日仏両国語で組むことにより、フランスでの販売も予定しており、ヨーロッパにおいても今後の反響が非常に楽しみな一冊です。現在もなお、ナディーヌは旺盛にコラージュの創作を続けており、彼女の今後の活躍が、世界の注目するところとなる確たる予感がしています。弊社のこの刊行が、その端緒となれば版元としてこれほどの喜びはないでしょう。
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