2015年1月14日
ブルトンの新訳、ついに刊行
待望の『マルティニーク島 蛇使いの女』日本語完訳版がついに弊社から刊行と相成りました。なぜ待望だったかと言いますと、知り得る限り、過去に二度、邦訳版が予告されながら刊行されなかった経緯があるからです。
一度目は1970年1月から刊行された人文書院刊「アンドレ・ブルトン集成」全12巻でありますが、最終巻に安藤元雄氏の訳で予告されていたにもかかわらず、周知のように、半分の6冊を刊行して終わり、結局、最終巻は未刊のままでした。二度目は、1981年9月に奢?都館から続刊予定として予告されましたが、ついに未刊に終わりました。
その後、一部抄訳等の紹介はあったものの、ブルトンとマッソンが唯一コラボレートした魅力的で貴重な一冊であるにもかかわらず、どういうわけか、刊行を予告する出版社が現れませんでした。
本国フランスでは、1948年にパリのサジテール書店から625部限定で初版が刊行されて以来、ブルトン没後の1972年にジャン=ジャック・ポーヴェールのペーパーバック版が刊行されただけで、以後、ガリマールのブルトン全集に収録されたまま今日に至っています。翻訳版は1981年に独訳版が刊行され、2008年に英訳版がようやく刊行、そして遅ればせながら、2015年の今年、ついに弊社から、日本語版を刊行する運びとなったわけです。
しかもこのたびの日本語版は、1948年初版本の瀟洒な装幀を再現したものとなっており、マッソンの素晴らしいデッサン9点も、初版本の挿入箇所や特色刷りを忠実に再現しております。これは1972年ジャン=ジャック・ポーヴェール版がマッソンのデッサンを巻末に集約したり、英訳版が1頁大のデッサン7点を半分以下に縮小して黒一色で字間に押し込めているのとは、大きな違いであり、本書は別丁綴じとして、マッソンのデッサンを際立たせています。さらに、アトリエ空中線の間奈美子さんの優れた手腕によって、初版本では無地であった裏表紙に、マッソンの素敵なデッサンを施し、より魅力的な装いとなっています。
弊社としても、刊行予告から約10年、読者からの期待の声も多く寄せられ、ようやく刊行が実現できたことにホッと胸を撫で下ろしている次第です。

本書はマッソンの詩があり、ブルトンとマッソンの対話があり、詩と散文と対話を組み合わせた、ブルトン自らが編んだアンソロジーであります。

それだけに内容に難解さを伴うわけで、訳者による読み応えのある解題を付した他、貴重な資料写真も多数収録しております。本書が戦後のシュルレアリスムを語る上で、看過できない貴重な一冊であるが故に、より立体的に読者の理解が進むよう取り計らいました。

そして本書によって、一世代前までの日本における、偏ったシュルレアリスム観やブルトン像の是正に一役買えばと願うものであります。
マッソン挿絵
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