2020年3月5日
詩画集『マルドロールの歌』刊行
さる2018年4月7日から22日まで、東京の画廊 「LIBRAIRIE6」 において、『マルドロールの歌』展として、ナディーヌ・リボーのドローイング全33点が、世界で初めて全作公開されてから約2年、ついにその全貌を収録した本書が刊行の運びとなりました。
すでに本書の刊行は2年前に予告していましたとおり、作品の内容等については、当社HPの NEWS 2018.4.1 に紹介していますので、ぜひご覧いただきたく存じます。
ナディーヌ・リボーは、ロマン派、ダダイズム、シュルレアリスムに大きな影響を受けた現代フランスの詩人・作家でありつつ、数々のコラージュやドローイングを創作し、本国フランスで活躍中のアーティストでもあります。
その彼女が、在日中に遭遇した東日本大震災以後、ロートレアモンの『マルドロールの歌』に強烈なインスピレーションを受け、魂に深く食い込んだ33ヶ所の章節から、憑かれたように絵筆を取って成り立ったのが、「今は冬の夜にいる」と題された33点に及ぶドローイングの連作です。
2018年4月7日、ナディーヌ・リボーは、その個展のために来日し、オープニング・セレモニーの席上で、終末の危機に瀕したこの世界と、イジドール・デュカスについて熱く観衆に語りかけました。
   私たちに提示された、世界への拒絶の道具として、
   詩の統治権を強く主張したロートレアモン伯爵こと
   イジドール・デュカスの、この狂おしい訴えが、
   (現在)聞こえてこないのは残念でなりません。
                 ──ナディーヌ・リボー
上記はその時の彼女の印象的な言葉ですが、私たちはまさに「冬の夜にいる」わけであり、このたびの新刊は、ロートレアモンからナディーヌ・リボーへ、詩からカンバスへと、その狂おしい訴えが全篇に流露しています。
現在、世界を脅かしている新型ウィルスのパンデミックは、『マルドロールの歌』の有名な章節、「パリの下水のコオロギ」、「トローヌの市門めがけて翔ぶ梟」などを彷彿とさせます。『マルドロールの歌』は不吉な黙示録になりつつあるのではないでしょうか。
さらに本書は、原画撮影と印刷において、トム・シュヴァーブ氏の極めて高い技術と緻密な作業により、原画とほぼ同じ色調を見事に紙面に伝えていますので、ぜひ作品を本書でご堪能ください。
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